somewhere sometime

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『っと…悪い。』

『ああ…こちらこそ不注意だった。失礼するよ。』

『?うん、こちらこそ…。』

(あんな奴この軍にいたっけ…?)


『将軍、こちらでしたか。』
『あ、なあ。あそこに歩いてる奴誰か知ってるか?』

『あそこに…?
  あ…あの方は…。』

『え、なんか偉い御仁だったりしたのか?』

『ご存知ないのですか?

あの方は劉備ど の と』

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「!!」
まさに跳ね起きる、といった勢いで凌統は目を覚ました。

「何だ…今の夢…。」

鼓動が早鐘のように撃つ。
先程見た奇妙な夢。

それは凌統に現実にあった出来事のように明確な記憶を残していた。

(あれは…俺だ…。それに…。)
夢の中で、着たこともない着物を着る自分。

そしてぶつかって謝罪した相手は。
(なんで…あのひとが…。)

紛れも無くあれは。

「劉備…さ…。」


ズキリ

その名を呼んだ瞬間、激しい頭痛と、焦燥感が凌統に襲い掛かった。

 

「う…っ痛ぅ……。
 なんだよ…これ……!」

痛い。痛い。痛い。
苦しい。苦しい。苦しい。

あいたい。

凌統は朦朧とした意識の中、深夜の外に出た。

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「ここで結構。
 お見送り感謝する…張遼殿。」
「分かり申した…お気をつけてお帰りください。」

すぐに帰宅する気にはなれなかった。
あの男と会った時はいつもこうだ。
去っていく車を眺めながら、劉備は長い溜息をつく。

劉備は溜息のあと顔をあげるとゆっくりと、
だがしっかりとした足取りで帰途につき始める。

あの頃のように、夜の街は暗くも危険でもない。
心が悩んでいても命の危険のない帰途。

だがこんな日は、たとえようもなくあの頃が懐かしくなる。


(…ああ、ここはいつもの公園か…。)
ふと見回せば、いつも「彼女」と出会う公園にたどり着いていた。
まだ自宅には遠いが、少し寄り道をしようと足を向けた。


誰もいない場所で、小さな愚痴がこぼれる。


「…いつになれば…。」


ガサリ

「?!誰だ!」

突然背後に現れた気配に、劉備は一瞬身構え振り向いた。


そこにいたのは。


「…そなたは…凌、統…?」

月明かりの下、先日で会ったばかりの姿が目に入った。
長身の端整な顔立ちの青年。


「劉備…さん…。」

凌統も劉備を把握したようだ。
だが、視線が泳いでいるようにも見える。

様子がおかしい。

よく見れば、おそらく寝間着にしているだろう服装だった。


「凌統…?どうしたのだ、様子が…。」
「オレ…は…あんたに…。」


会ったことがあるのか?


言葉は音にならず。
凌統は再び襲ってきた頭痛に顔をしかめる。


「い…痛…ぅ…。」
耐えきれず膝をつく。

「凌統?!どうした、具合が悪いのか?!」
劉備は、異常な様子に慌てて凌統の傍に駆けよる。


凌統は自分を支えようと差し出された腕をつかんだ。
縋るような力だった。


「…っ?凌統…?」
訝しげに凌統の顔を見ると、凌統は劉備をまっすぐ見つめた。
そして、絞り出すような声で言った。



「どうして…あんたが夢に出てきたんだ…?」


「…!」


それだけ言った後。
凌統は意識を失った。



「……まさか…お前…。」



凌統は劉備の驚愕を、まだ知らない。



                                      To be Continued…



短いですが思ってるよりずっと早く続きが書けてよかったです;
一応話が少しずつ見えてきたところかな?
まだまだ人が出そうで困りますね;;ちゃんと凌劉で追われるよう頑張ります…。

いろんな意味で障害…多いですよね…(笑)


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